歯周病とは

歯周病PCR検査のおしらせ

当歯科室では、以下に説明する歯周病のリスクを客観的に数値化するために、歯周病PCR検査を行っております。

歯周病のなりやすさ、なりにくさは清潔不潔とは別の要因も非常に強く関係しています。したがって正しい自己把握は歯周病予防に大変重要です。

くわしくは下記バナーからリンク先をご一読ください。

はじめに

なじみ深いようで、分かりにくい歯周病。その実態は、何でしょうか。

一部に、非常に広く定義を取って「歯周病菌がいるはずだから歯周病だ」「成人は全員歯周病だ」と主張する向きもあります。 しかし、実態としては

骨が溶ける

ことにより

歯が抜ける

ことにつながる疾患だ、と考えてください。
その原因になる菌が、プラークの中にいる『歯周病菌』です。

これが歯の周りの組織や(見た目は)骨の中で増殖し、"わるさ"をします。その過程で、歯肉から膿や血が出たりするので、以前は歯槽膿漏と呼ばれていました。

歯周病が進行すると、ある日突然、一気に多数の歯を失うことになるかもしれません。

歯周病の恐ろしいところは、サイレントディズィースといい、自覚症状がほぼないところです。そこでひとたび歯周病が発覚した場合は早期発見・早期治療が大事です。自分自身で早期発見したつもりでも、相当進行していることも少なくありません。

また、「自分はむし歯知らずだ!」と思っている方 こそ安心してはいけない疾患です。なぜなら、むし歯菌と歯周病菌はまったく違う種類の菌だからです。

歯周病にダマされる私たち

さきほど、歯周病はサイレントディズィースで自覚症状がほぼないと書きました。
これは、わざと歯を磨かないで数日過ごしたかと思しき写真です。
爪で歯をひっかくと、たくさん"白いの"がついてきそうですね。
右側は、これの汚れの部分を顕微鏡で見たものです。

この写真のような、いわゆる「きたない歯」の人の場合

◆ プラーク(白いオカラ、歯垢)
◆ 食べかす(もやし、のり、肉etc)

が歯にこびりついています。この顕微鏡の写真は「プラーク」の写真です。

ちなみに当然ですが、食べかすは死んでいますがプラークは生きてます。
つねにお口の中で細胞分裂をしています!
そして悪さをするのです。

上の長い棒のようなものが、歯周病菌群です。
 ~唾液中のカルシウムイオンと結合して歯石になる性質があります。

下のつぶつぶのような丸いものが、むし歯菌群です。
 ~糖分を分解して、酸を出す性質があります。

ところで、これらは全く異なる種類の菌ですが、共通点が一つあります。
それは、「酸素がキライ(通性嫌気性)」ということです。
このことは、のちに重要なポイントになってきます。

基本的に、歯周病菌は固まって結石のような歯石になります。

もうこうなると、機械でしか取れません。
まださきほどの「きたない歯」の状態であれば、歯ブラシで取れたのですが・・・

そこで取ると、このようにすっきりします。

すっきりするだけではなく、じつは、歯石を取るということは歯周病治療の根本をなす必要条件です。よくCMでやっているさまざまな種類の歯磨き粉は、断言しますが本質的になんの意味もありません。

では、歯石を取らないとどうなるでしょう。

このように、見える歯石の下に、茶色っぽい見えない歯石が増殖します。
歯周病菌は「酸素がキライ(通性嫌気性)」なので、酸素のない方ない方に行こうとします。
必然的に、上でなくて下のほうに進んでしまいます。
そうすると、歯周病菌にとってはより理想的な環境になった形になり、歯石もより固く頑丈になってしまいます。
白っぽい上の方の歯石(縁上歯石)は柔らかくて取りやすいのですが、茶色っぽい下の方の歯石(縁下歯石)は我々にとっても頑丈で取りにくいのです。

しかし、私たちには縁下歯石は見えません。自覚症状も全く出ません。

「歯医者なんか、痛くなってから行けばいいや」と思っていると・・・

何年もかけてじわじわと進行していきます。
左~せめてまん中くらいまでに痛みが出てくれればよい(という表現もいかがかと思いますが)のですが、右の状態になるまでずっと自覚症状がなくて、 初めて急激に腫れたりしてあわてて歯医者に駆け込む方も少なくないのです。

残念ですが、事ここに至っては・・・

しかしもう一度図をご覧ください。

左から右に移るにつれて、茶色い歯石が増えた分、骨(大理石のように見える部分)が相対的に減っています。
しかも、歯肉に隠れているので、そのことを私たちは日常全く関知できません。
さらに悪いことに、一度下がった骨を、現在の医療レベルでは元に戻すことはできません。
(現在iPS細胞などを用いて、ようやく基礎的な研究が始まったばかりです)

歯周病を自分の力だけで発見するのは、無理だと、お分かりいただけたかと思います。

「では、歯医者に行って歯石を取ってもらおう」

まん中くらいの状態の人が歯医者に行ってスッキリしてきました。
しかし、その人が、歯ブラシの方法を改善しなかったとします。
すると、さらに悪質なことが起こります。

そうです。 歯周病菌は「酸素がキライ(通性嫌気性)」なので、いきなり歯周ポケットの一番底に向かって一直線に進みます。
そこを出発点として、また歯石を作り始めてしまうのです。

状態としては、元の木阿弥です。
さらに、見た目的には炎症が治まったような感じがしますので、余計にたちが悪いです。

ですから、歯周病の治療と予防には、歯ブラシの改善・プラークコントロールが欠かせないのです。
ここは、自力のみでは無理ですから、プロの力も借りるべきところです。

また、理論上ですが、プラークさえコントロールできれば、歯石に移行しないはずなのです。
現実的には無菌化は無理ですが、少なくとも、進行を非常に遅くすることができます。

そして、この段階ならご家庭の歯ブラシで対応可能なのです。だから予防は重要なのです。

デンタルリンスについて

最近は、歯周病予防と称して、さまざまなデンタルリンスが売られています。

しかし、基本的に「プラーク」は水に溶けません。個別で遊離している菌には効くかもしれませんが、プラークとして固まっている状態の菌には事実上全く無効です。
また、菌(原核細胞)は歯肉(真核細胞)よりも薬に耐性が強いので、本当に効くレベルまで濃度を上げようとしても、お口がただれてしまうばかりで、菌にはあまり効きません。

遠回りなようですが、しっかりと歯ブラシすることが基本です。

歯周病の治癒・治療

治癒・病状安定について

残念ながら、ひとたびある程度の歯周病になってしまうと、しっかり歯周治療を行っても骨などの歯周組織や歯肉が少し下がった状態で落ち着いたりします。

現在のところ、この下がった歯周組織をもとのように上げることは技術的に極めて困難です。

かといって放置すると、治癒や病状安定は望めません。

放置していると病状が進み、場合によっては抜歯を待つのみで機能しない歯、ということになります。

歯周病治療の順序

治療目標は、極力残せる歯を残す、お口の機能を落とさずに維持することです。

治療手段は、そのための感染除去を含む原因除去を、ステップを踏んで行っていきます。

治療順序は、簡単なもの、自分でできるものから複雑なもの、専門的なもの、の順に行っていきます。

誤解されている方が多いのですが、「何か専門的なことだけやってもらえれば治してもらえる」というきわめて他力本願的な方が当歯科室でも後を絶ちません。たとえば「目先の歯石だけ取ってほしい」のようなケースです。
しかし、お気持ちは分かりますが
◆ステップを踏まないと歯周病は治癒・病状安定しない
◆自助努力の上にこそ花が咲く
ことが学問的にも明らかですので、ぜひよろしくお願いいたします。

検査

具体的にどの程度のものなのか、レントゲン写真や歯周ポケット測定により診断します。
詩集ポケットの深さと進行度には強い相関があることが知られているからです。

かといって、検査もせずにやみくもに歯石除去をしようとすると、深いところの歯石を取り残したり、浅いところに不必要に器具を押し付けてしまうことになります。

そうすると、結局、実質的な効果がなかった、ということにつながります。

また、以下の点なども歯周病では重要なファクターです。
怪訝な顔をされる方も多いのですが、治療とあわせて見直すことで大きな効果があります。

◆歯ぎしり・くいしばり~不正な横向きの力で、骨が失われるリスクが高まります
◆かみ合わせ~不正な横向きの力で、骨が失われるリスクが高まります
◆歯ならび~みがきにくい場所は菌の工場となり、歯周病が治りません
◆生活習慣~とくに歯みがきの習慣が大事で、これを改善しないと歯周病が治りません
◆喫煙習慣~ニコチン・タールなどの細胞毒性、一酸化炭素の細胞呼吸阻害etc
◆全身疾患~糖尿病や腎疾患、免疫疾患などは歯周病の大きなリスクファクターです。

初期治療

◆ブラッシング指導・プラークコントロール
まずは歯みがきで炎症を軽減させることが大事です。【予防処置】でも述べたように、細菌の表面にはLPSという毒素があるので、
歯をみがく → 細菌が減る → LPSが減る → 炎症がおさまる
という理屈で、炎症がおさまってきます。

ここでの指導・アドバイス内容はすぐれて専門的なプロのコーチングになります。ここをおざなりにすると全てが台無しですし、ここをとばして次のステップに移ることも、むしろ歯肉を痛めるので有害です。

◆リスクファクターの除去
食習慣や生活習慣、喫煙習慣など、見直せるものはすべて見直していただきます。
一気に全てを改善することは難しいかもしれませんが、可能なものからひとつひとつ見直していくことにより、より大きな効果が期待できます。
歯ぎしり・くいしばりや歯ならび、かみ合わせ、全身疾患への対応などは時間をかけて見直していきます。

◆歯石除去
ブラッシングの改善により歯肉が安定してきたらはじめて安心して歯石を除去することができます。

再評価

◆再検査
今までのステップで改善された点、さらに治療を要する点などを分析して、必要があれば進めていきます。
◆深い部位の歯石除去
初期治療ではケアしきれないような、歯肉の裏にあって目に見えない歯石を除去していきます。
◆特定原因菌の除菌
おもに抗生物質の軟膏を用いて、深い歯周ポケット内部の歯周病菌を除去します。

応用的治療

◆再検査
それでもケアしきれない部分の洗い出しを行います。
以下に述べる内容は、前述の部分がしっかりできていて初めて意味を持つものです。
◆歯周組織再生療法
歯肉を一部開かないと完全に歯石を取りきれない場合には、外科的な治療法の適用になります。ただ歯石を取るだけでなく、大きく失われた骨や歯の歯根膜・セメント質を再生させ、なるべく抜歯にならないようにします。
◆歯周矯正
今後の予防のため、または治療の障害を取り除くために重要なステップです。歯並びが悪いせいで歯みがきや歯石除去が不可能な場所をそのまま放置することは、病状の悪化や抜歯につながります。
◆インプラント・歯周補綴
歯の本数が少なく、過剰な負担がかかり歯が危険な場合は、インプラントで負担を受け止め、残存歯の負担軽減を図るのが非常に有効です。
また、場合によっては揺れている歯のかみ合わせを調整したり、連結によって力の方向を制限して揺れを安定させたりします。

メンテナンス

ある程度、歯周病になってしまった歯周組織は、健康な組織に比べてかなり弱ってデリケートになっているのが普通です。定期的な診断とブラッシングのチェック、専門的クリーニングが重要になってきます。

さいごに

口腔は、ものを食べたり、話をしたり、いろいろな面で毎日活躍します。同時に、口から入った食べ物は身体の栄養源となり、私たちが毎日生きていくために欠かせない大切な入り口です。
日々快適で、有意義かつ大切なときが過ごせるよう、サポートさせていただけると幸いに思います。

根本齒科室では、歯周治療・メンテナンスでは世界一高品質の(有)錦部製作所製の超音波チップを使用しています。