抜けた歯の放置

こんなこともあります。

あごの骨は、廃用性萎縮といって、やせ細っていきます。あまりにやせ細ると入れ歯にする にも安定が悪くなり、インプラントもできなくなります。

抜けた歯の両隣の歯は、歯のないほうに倒れていきます。抜けた歯の相手の歯は、相手が いなくなるのでどんどん伸びていきます。

そうするとどのような不都合が生じるか?

上の図の真ん中のように、かみ合わせがおかしくなり、顎関節症などのもとになったりするのはもちろんのことですが、このまま、上図右(または下)でいう赤い点線のようなラインでは治すことすらままなりません。バランスを考えても青い点線のラインで治す必要がありますが、そのために健康な神経を取らなければならなくなってしまう(便宜抜髄)ことも多々起こります。

できるだけ早く、代わりのものを入れて、このようなことを防ぐ必要があります。

従来型治療の問題点

◆ ブリッジ

たとえば1本の失われた歯を修復するために、健康な歯を2本以上傷つけることになり、削った歯やブリッジの寿命の低下につながります。

またこの場合、歯2本で3本分の働き(1.5倍の働き)をすることになり、ダメージが蓄積します。

ブリッジの平均寿命は8年程度です。遠からず、土台の歯ごと「共倒れ」は不可避です。

◆ 部分入れ歯

入れ歯を固定するためのバネが、見た目にも機能的にも不快です。食べかすもたまりやすいのでむし歯や歯周病にもなりやすく、硬いものやひっつくものを食べると取れたりします。

また、バネのかかる歯は横の力が強く働くため、寿命が大幅に低下することが知られています。

部分入れ歯の平均寿命は3年で70%、5年で50%程度です。また、バネのかかる歯は4年で93%程度がむし歯になることが分かっています。作り直しの大半は、バネのかかる歯を抜歯して、より大きな入れ歯になってしまいます。

まさに「合法的な抜歯装置」と呼ぶにふさわしいものです。

◆ 総入れ歯

総入れ歯では横の動きが制約されますので、硬いものやひっつくものは基本的に食べられません。

また顎の骨は2年で1ミリ程度やせていきますので、入れ歯がずれたり食べ物が内側に入って痛かったりします。つまりそこで作り直しになってしまうのです。

保険の入れ歯は厚手のプラスチック製ですので、違和感も大きく、食べ物の味も満足に感じられません。

一般に、入れ歯のそしゃく能率(かみやすさ)は、天然歯と比べて30%から、総入れ歯で80%程度も減少するといわれています。


インプラント治療に関しては、しかしながら、やはり精神的な「ドリル」とか「ねじ込む」などの恐怖感からか躊躇される方も少なくありません。お気持ち重々お察し申し上げます。

私は、その方がどれだけ幸せになれるかこそが、歯科の重要な価値だと思っています。そしてその判断基準については、決して短絡的な目先の感覚ではなく、残りの長い人生をいかに生きられるかを中心に考えています。