歯科の「正しい対応」

歯科を「不治の病」にしないために

物事への「正しい対応」を選択するためには、その問題が持つ性質を正しく分類する必要があります。

ここでは「あらかじめ防げるか(回避可能性)」と「自然に元通りになるか(復旧可能性)」という2つの視点から、一般的な事象を4つのグループに分類して考えてみましょう。

問題を定義する4つのグループ

前ページで、医科と歯科は「自然治癒力」「回避・予防」の点で性質が逆であると述べました。

そこで、この点を一般化して考えてみます。。

そうすると、「出来事」を4つに区分することができます。

◆ グループA「回避あり」「復旧あり」
◆ グループB「回避あり」「復旧なし」
◆ グループC「回避なし」「復旧あり」
◆ グループD「回避なし」「復旧なし」

この考え方を当てはめてみますす。

歯科の正体は「グループB」である

歯科疾患(むし歯や歯周病)の最大の特徴は、「自然治癒(復旧)はしないが、事前の予防(回避)は極めて有効」であることです。

定期検診やクリーニングといった事前の回避努力は、低コストで高い効果を発揮します。万が一発症しても、早期発見により被害を最小限に抑えることができます。このグループにおいて「予防」こそが最強の戦略であることは、論理的に明白です。

「グループの勘違い」が悲劇を生む

私たちが陥りやすい最大のミスは、グループB(歯科)をグループC(一般医科)と混同することです。

グループC(一般医科)の思考は、「予測不能な事故なのだから、起きてから治せばいい(オンデマンド対応)」というものです。

これが歯科に誤用されると「痛くなってから歯医者に行けばいい」になってしまいます。

一般医科であれば、事後の迅速な対応によって自然治癒力が引き出され、元通りになります。しかし、復旧性のない歯科において「痛くなってから(事後)」動くことは、すでに詰みの状態を意味します。

放置すれば「進行性の難病」に

グループBであるはずの歯科疾患に対し、事前の回避努力を怠り、グループCのような事後対応を繰り返すと、その問題はグループD(回避不能・復旧不能)へと変質してしまいます。

つまり、本来防げたはずの歯科疾患が、本人にとっては「なす術のない進行性の難病」へと化けてしまうのです。

これが、詰め物に始まり、入れ歯やブリッジなどにいたる人工物の本質です。あくまで「失った後の埋め合わせ」であり、真の意味での治癒ではありません。

結論:戦略を「事後」から「事前」へ

私たちが歯科疾患に苦しめられてきたのは、その性質を「避けられない事故」だと軽く考え、事後の対応に終始してきたからです。

歯科を「進行性の難病」という化け物に変えないための唯一の方法は、戦略を「事後の治療」から「事前の回避」へと180度転換することにあります。

この分類法を理解すれば、歯科通院の目的が「修理」ではなく「管理」であるべき理由が自ずと見えてくるはずです。