私がはじめて歯科臨床で審美的なことを、歯だけではなく顔とのからみで真剣に意識するようになったのは、『シンメトリーな男 (新潮文庫): 竹内 久美子 著』という本を手にしたことがきっかけでした。
私たちが誰かと向き合うとき、無意識のうちに相手の表情、特にお口元のバランスを察知しています。多くの研究では、生物は「左右のバランス(シンメトリー)」がより整っている個体ほど、本能的に魅力を感じる、つまりモテるという説があります。これは人間も例外ではありません。
お顔全体のバランスの中で、歯並びや歯の色が整っていることは、対話における第一印象に大きな影響を与えます。お口元に自信が持てると、自然と表情が明るくなり、コミュニケーションも円滑になります。
一方で、歯や歯ぐきのバランスが崩れていると、それは単なる「見た目」の問題だけでなく、無意識のうちに「清潔感」や「健康状態」のイメージとして相手に伝わってしまうこともあります。
審美修復とは、単に歯を白くするだけではありません。歯の形、色、そして歯ぐきとの調和を整えることで、あなた本来の魅力的な笑顔を引き出すお手伝いをする治療です。
「芸能人のような真っ白で綺麗な歯にしたい」というご要望に対して、最も美しく、自然な仕上がりをお約束できるのがオールセラミックスです。現在、歯科で使用される材料の中で、透明感と質感が最も天然の歯に近い素材です。
【オールセラミックスの特長】
非常に細密なデザインが可能で、ご自身の歯と見分けがつかないほど自然に仕上がります。
セラミックは水分を吸収しないため、時間が経っても変色することがなく、美しさが長持ちします。
金属を一切使用しないため、金属アレルギーの心配がなく、歯ぐきが黒ずむこともありません。
歯に近い透明感があるため、土台に「ファイバーコア」を併用することで、天然歯のような輝きを再現できます。
お口の状態によっては、他の治療法が適している場合もあります。まずはていねいな診察とカウンセリングが大切です。
従来の入れ歯の最大の悩みは、入れ歯を固定するための「金属のバネ」でした。見た目が気になって思い切り笑えない、バネがかかる歯に負担がかかる、食べかすが詰まりやすいといった欠点がありました。
「インプラントには抵抗があるけれど、ブリッジのように健康な歯を削りたくない」「入れ歯だと気づかれたくない」という方に最適な選択肢が、このノンクラスプデンチャーです。
逆に、インプラント治療中の歯がない期間の仮歯としても多く用いられています。
【ノンクラスプデンチャーの特長】
金属のバネがなく、歯ぐきに近い色の樹脂で固定するため、装着していても周囲に気づかれにくいのが最大の特徴です。
非常に薄くて軽いため、従来の入れ歯に比べて違和感が少なく、お口にフィットします。
見た目と機能性のバランスが良いため、初めて入れ歯を作られる方の「ファーストチョイス」としてもお勧めです。
ノンクラスプデンチャーは取り外し式ですので、毎日の洗浄などのお手入れは必要です。また、弾力性があるため傷みやすく、約5年を目安に調整や作り直しが必要になる場合があります。
「白い歯は全て高額な自由診療」と思われがちですが、現在は健康保険の範囲内でも、質の高い白い治療が選択できるようになっています。
差し歯を支える「土台(コア)」は、建物の基礎と同じくらい重要です。かつては金属製の土台が主流でしたが、現在は「ファイバーコア」という、グラスファイバーを用いた白い土台が主流です。
【ファイバーコアのメリット】
金属の土台は硬すぎて、強い力がかかるとご自身の歯(歯根)を割ってしまうことがありました。ファイバーコアは歯に近いしなやかさがあるため、歯を長持ちさせることができます。
透明感のあるアイボリー色なので、上にかぶせる白い歯の美しさを最大限に引き出し、自然な仕上がりになります。
以前は自由診療のみの扱いでしたが、現在は保険適用となり、より多くの方に「歯を守るための最善の選択」をしていただけるようになりました。
コンピューター制御で、スキャンした土台のデータに基づいてブロックから歯の形を削り出す技術を「CAD/CAM」といい、この技術で製作されてた修復物のうち、かぶせ物をCAD/CAM冠とよびます。
昨今急速に保険診療の範囲が広がっており、現在特に断りなくCAD/CAMという場合には、保険適用のハイブリッドセラミックのブロックを削り出して作成する修復物のことをさします。
歯科で使われる白い材料には、大きく分けて3種類あります。
◆ プラスチック(レジン):
加工はしやすいが、摩耗や変色が起きやすい。
◆ セラミック(陶材):
非常に美しく劣化が、高価で、衝撃に弱いことも
◆ ハイブリッドセラミック:
セラミックの成分をレジンでつないだもの。両方の長所を持つ。
【CAD/CAMの特長】
あらかじめ均一に固められたハイブリッドセラミックのブロックをコンピューターのデータで削り出して製作するので、収縮や変形しないことが精度や適合性に対して非常に有利に働いています。
従来型の、素材を積み重ねて少しづつ重合させる方法に比べて、物性のムラがなく均一なので強度も大幅に向上しています。 また、ハイブリッドセラミックそのものが持つ適度な「しなやかさ」があるため、かみ合う歯を痛めにくく、特に奥歯の修復に向いています。
現在は、一定の条件を満たせば、前歯から奥歯まで保険で被せ物を白くすることが可能です。
むし歯を削った後の「詰め物」も、これまでは直接詰める方法(レジン充填)や銀歯が一般的でしたが、現在はCAD/CAM技術を用いた修復物のうち詰め物をCAD/CAMインレーと呼び、保険診療の主流となっています。
その場で直接詰める方法(レジン充填)は手軽ですが、テクニックセンシティブ(上手下手が出やすい)です。また、固まるときに若干収縮し、強度面でも不利です。穴(窩洞)の範囲が一定程度大きいい場合は、CAD/CAMのほうが優れています。
銀歯の見た目が気になる方や、金属アレルギーを心配される方にとっても、大きなメリットがあります。
歯を失った部分を補うブリッジ治療においても、一定の条件下で「金属を使わない白いブリッジ」が保険で可能になりました。
【高強度硬質レジンブリッジのポイント】
丈夫なグラスファイバーを芯に使うことで、金属を使わなくても一定程度の強度と耐久性があります。
金属アレルギーの心配がなく、お口の中が非常に軽く感じられます。
ただし、この治療には「奥歯がしっかりそろっていること」などの細かいルールや、強い歯ぎしりがある方には向かないといった制約があります。また、非常に手間の掛かる精密な治療のため、当院では患者様のお口の状態を慎重に診断した上で、最適なケースに絞ってご提案させていただいております。
審美修復は、単に見栄えを良くするためだけのものではありません。「しっかりかめること」「歯を長持ちさせること」という歯科本来の目的を、高い次元で両立させるための治療です。
保険診療と自由診療、それぞれにメリットとデメリットがあります。当院では、患者様のご希望とお口の状態に合わせて、最適なプランを一緒に考えてまいります。どうぞお気軽にご相談ください。