昔から、「明眸皓歯」や「朱唇皓歯」という言葉があるように、きれいな歯ならびは健康で美しい人の条件として 知られています。
よく言われることですが、アメリカではテレビに映し出される政治家をはじめ、各界で活躍する人々がみなきれいな
歯ならびをしています。
歯ならびが整っていることを社会生活を営む上での必須条件とする背景が、欧米では特に強いためだからといえるでしょう。
最近はアジアでも台湾、韓国などで同様の傾向が顕著に見られます。
歯の矯正は、人生の中では一生に一度行うか行わないか、という出来事です。
心理的インパクトとしてはいわゆる結婚してマイホームを購入するくらいのものがあります。
ですので、ライフセンテンス(一生)におけるメリットとデメリットのことを考え、目先の価格や短絡的な価値観にとらわれずに、よくよく熟慮されるようお願いいたします。
歯ならびが悪い部位が変なかみ方をするようになると、あごに負担がかかって顎関節症の原因になったり、 歯に横向きの負担がかかることで歯周病が病的に進み、ぐらぐらになったりします。
よくみがけない部位がむし歯の原因になるのはもちろんですが。同時に歯周病の原因にもなります。 最近では、歯周病の予防や、歯列の維持のための「歯周矯正」という考えも一般的になっています。
何本かの歯が反対咬合になっていて深くかみ込んでいる場合は、一旦深くかむと横に滑らせることができないことが多いです。日中はそれでもうまくやり繰りして食事をこなしていますが、夜間になるとその部位をめがけて強い力で歯ぎしりやくいしばりを起こすことも多いです。
そのほかあなたのお困りな点も立派な理由です。
日本は、世界で唯一、矯正を恥ずかしがる、まことに奇妙な国です。
欧米では全く事情が違います。
骨格の違いもあり一概に同じとは言えないのですが、ほとんどの欧米の国は矯正に保険(アメリカは民間保険のオプション契約)が利くので無料ないしはきわめて格安の価格で矯正治療を受けることができます。
また、ヨーロッパでは、「歯科治療のための積立預金」が広く普及しており、お子様が生まれたらすぐにそのような口座を作成して準備するとのことで、治療直前にあわてるということはほとんどないそうです。
なおシンガポールでは、歯科積立口座には相続税がかからない(歯科医療改革のストラテジー&スーパービジョン(川渕孝一ほか 医学情報社))ので、世代間での普及率は非常に高いとのことです。
もちろん、子供たちの間では矯正治療は当たり前とされており、ミッキーマウスやディズニーその他のかわいらしいキャラクターの装置やカラフルなゴムをみな楽しんでおります。
「欧米は安いから普及しているだけだろう」
という声が聞こえてきそうですが、その意見はどうでしょうか?
少なくとも我々が矯正を「恥ずかしい」と思う理由の説明にはなりませんね。
アジアはどうでしょうか?
矯正が一番進んでいるのは、残念ながら日本ではありません。韓国です。
日韓は、大学レベルでは交流が進んでおり、あるていど向こうの事情も伝わってきます。
韓国では、残念ながら矯正に保険は利きません。それどころか・・・
(でも韓国は整形なども安くて盛んといわれているから、日本よりもだいぶ安いんだろう)
とんでもありません、日本円に直して同じくらいの料金を取るそうです。
アジア通貨危機当時のIMF騒ぎから、最近のウォン乱高下を経て、一人当たりGDPがかなり下がっている韓国の国民にとっては、つらいところです。
それでも小学校1年生になると、親はこぞって矯正の先生のところに子供を見せに行くそうです。
これは金持ちの家庭だけではなく、かなりつつましい家庭まで含めてほぼそのような風潮だとのことです。
これは、私の母校に留学してきた延世大学の教授(現在)の人を指導していた先生からじきじきに教えて頂いたことなので、ウソであるわけがありません。
上述の指導医の先生から聞いた話です。
アメリカンスクールに通っていた帰国子女の日本人の方が矯正をすることになりました。
日本人医師は、女性の口元なので目立たないようにと気を遣って、白いセラミックのブラケット(歯につけるボタン)で治療しようとしました。
すると彼女は文句を言ったそうです。
「これでは矯正をしているように見えない。もっと目立つようにしてくれ」
何でも、白人はもとよりヒスパニックやアジアン、アフリカンなど他民族の友人に「日本人は矯正もしないのか」と笑われたくないとのこと。
結局 「わざと」古色蒼然とした ?!金属製のブラケットで目立つようにしたとのことでした。
日本人や韓国人は、3級(反対咬合)が多く、3級の非外科治療ノウハウはほとんどこの二国発だそうです。 このように、日本人には本来不正咬合が多く、潜在的には7割は不正なかみ合わせであるとされています。
しかし、そのうちの5%程度しか 矯正治療を受けていません。
また、さきの帰国子女ではありませんが、なぜ 世界でも日本人だけが 矯正の装置を恥ずかしいと思うのでしょうか?
私はきわめて疑問です。なぜなら、もし自分が矯正することになっていたとしても、ブラケットをつけることが恥ずかしいとかみっともないなどとはこれっぽっちも思わないからです (さすがに前歯に金属製は勘弁ですが)。
これがまさに「井の中の蛙」という「情報鎖国」なのでしょう。
そこで、なぜ矯正が大事か、です。
この質問はおそらく日本人100人いたら100人とも間違うと思います。
見た目のこともそうですが、何よりも正しい歯ならび・咬み合わせは
力のコントロールにつながる~歯周病・顎関節症の予防になる
全部の歯をきっちりみがける~むし歯・歯周病の予防になる
という予防の切り札になるから大事なのです。
むしろ矯正をしないということは
私は歯が不潔なのを放置したい
私は歯を清潔にするつもりが無い
という、きわめてみっともない後進的なメッセージに等しいのです。
その意味で私の個人的な考えは、ヴァージンアトランティック航空のリチャード・ブランソン会長と同じで、矯正装置がついていることはむしろ礼儀正しさ・自制心の現れであり、素敵でカッコいいと思います。
むしろ、歯ならびの悪さを棚に上げて
「自分でみがけないところがむし歯になったから治療してくれ」
などと主張できるような思慮の浅さや自省不足、あるいは歯に矯正装置がついていると恥ずかしいのにむし歯や歯石がポロポロついていても恥ずかしくない、という本末転倒に気がつかないことの方がよほどみっともないと思います。
幼少時に矯正を頑張れば、将来むし歯や歯周病になる可能性が激減するのですから、私はむしろ国はこちらに公金をかけるべきだと思います。
日本人に多い受け口(反対咬合)は治療が長くかかることが多いので、お早めにご相談ください。
矯正治療は永久歯にはえ変わる時期にはじめるのが理想です。結果的に簡単な治療で済むこともしばしばです。
永久歯がはえそろい、本格的な矯正も検討できるようになります。
体の成長が落ち着いた後でも矯正治療は可能です。むし歯や歯周病はその前に治しておきます。 一般には成長期の矯正よりも時間がかかります。
あらかじめ診断用の型と顔写真、レントゲン(正面・側面)を撮っておき(ここまでは無料です。一般診療の時間に行います。)それをもとに専門医があなたのお話を伺います。
これらを元にして、治療計画、期間および費用を決定いたします。
始める前に、むし歯や歯周病の治療が先行して必要になることもあります。
最近は取り外し式のものもありますが、一般には歯に取り付けるタイプのものが主流です。
このときにやや高額なお金がかかります。
この分の全部または一部分について、分割払いのご相談、カードによるリボ払い、も承っております。
定期的に装置の点検をしたり、交換・修理したりします。
また必要に応じて、追加的なむし歯治療や歯みがき指導、その他の処置を行うこともありますので、
なるべくお休みせずにご来院ください。
◆ 抜歯について
私たちは、健康な永久歯を抜くことそれ自体に医療従事者として大変に気の引けるものですが、 今後のことも考えて必要性がある場合は、そのように診断せざるを得ない場合があることをご理解ください。
歯ならびや全体としての機能・バランスを考慮したときに、1本も抜歯しないよりも、はるかに良い結果を もたらすケースも往々にしてあります。
元に戻らないように、一定期間「リテーナー」と呼ばれる目立たない簡単な保定装置を使用します。 長期間にわたることも多いですが、必ず専門医の指示に従ってください。
ある意味、治療よりも重要な点と考えています。リテーナーを紛失した場合はただちに当歯科室までご連絡ください。