歯周病の正体と正しい治療

サイレント・ディズィース

「自分はむし歯がないから大丈夫」と思っていませんか? 実は、むし歯がない人ほど注意が必要なのが歯周病です。 歯周病は、痛みがないまま進行し、ある日突然、健康なはずの歯を根こそぎ奪っていく恐ろしい病気です。別名「サイレント・ディズィース(静かなる病気)」とも呼ばれます。

正しく理解し、正しく対処するためのポイントを解説します。

歯周病の本質は「骨が溶ける」こと

歯周病を単なる「歯ぐきの腫れ」だと思っていませんか?その実態は、歯を支えている土台(歯槽骨)が融けてしまう病気です。

むし歯菌

糖分を分解して「酸」を出し、歯そのものを溶かす。

歯周病菌

歯ぐきの溝に潜み、歯を支える「骨」を破壊する。

この2つの病原菌は全くの別物です。そのため、「むし歯が一本もない」という方でも、歯周病によって歯が抜け落ちてしまうリスクがあるのです。

汚れ(プラーク)は「生きている」

お口の中の汚れには、大きく分けて2種類あります。

ひとつは「食べかす(肉、野菜など食べ物の残り)です。これらはいわば死んでいるので増殖はしません。

もうひとつはプラーク(歯垢)です。これは歯周病菌・むし歯菌などの雑菌の塊であり、生きているので常に増殖し、毒素を出しつづけます。

【図1:顕微鏡下のプラークの写真】

顕微鏡で見ると、プラークは密接にからまってウジャウジャと動いています。また彼らは唾液中のカルシウムと結合し、石のように硬い「歯石」へと変化します。

なぜ歯周病菌は「奥へ」逃げるのか

歯周病菌には一般に「通性嫌気性(つうせいけんきせい)」という性質があります。簡単に言うと、「酸素があっても大丈夫だけど、好きか嫌いでいうと嫌い」なのです。

そのため、菌は酸素に触れる表面を避け、より酸素の少ない場所、つまり歯周ポケットの深い奥底へと逃げ込んでいきます。

恐怖の「縁下歯石(えんかしせき)」

歯石は、大きく分けて2種類あります。

見える歯石(縁上歯石)

白っぽく、歯ブラシでも意識すれば気づける場所

見えない歯石(縁下歯石)

歯ぐきや縁上歯石に隠れた歯周ポケットの奥にこびりつく茶褐色の歯石

【図1:歯石を取った後の写真】

通常最初は悪性度の高くない「見える歯石(縁上歯石)」から始まります。この段階で歯科医院でクリーニングすると、写真のようにとてもすっきりします。

しかし放置すると、その見える縁上歯石の裏側が酸素が少ない場所になります。そこで歯周病菌が活性化し、裏側に「見えない歯石(縁下歯石)」ができ始めます。

初期P 中期P 末期P

酸素を嫌う菌は、どんどん奥へ、骨を融かしながら進んでいきます。奥へ行くほど歯石は硬く頑丈になりますが、歯肉がかぶっているので日常の目視では進行度合いが確認できなくなります。

これが「気づかないうちに手遅れになる」最大の理由です。

歯周病治療の「絶対条件」

歯周病治療において、市販の歯磨き粉やデンタルリンスだけで治そうとするのは、実はほぼ無意味です。

歯石になる前の歯周病菌(プラーク)はバイオフィルムを張って抵抗するバリア機能があるため、薬剤が中まで浸透しにくいのです。歯ブラシで落とすしかありません。

また歯石は石です。一度石になってしまうと、歯ブラシでは無理で、歯科医院で専用の機械で物理的に除去するしかありません。

「しっかりとしたプラークコントロール」が歯周病治療のスタートにはどうしても必要であり「歯石を徹底的に除去すること」が歯周病治療には欠かせない必要条件です。

「治る」=「元通り」ではない

ここが重要なポイントですが、歯周病などで失われた歯槽骨の形状は、現在の一般的な歯科医療では元通りに再生させることは非常に困難です。

初期P 中期P 末期P

写真上が軽度、中程度、重度の歯周病の状態、下がそれぞれの「治癒」状態です。重度の場合、「治癒」に際して歯を保存できないことがあります。

初期 治癒   

治療が成功し「病状が安定した」状態とは、炎症が治まり、歯肉がキュッと引き締まった状態を指します。この時、たとえば中程度の歯肉の位置は以前より少し下がり、骨も少し減った状態で安定することになります。

この場合、一過性の知覚過敏が出ることもありますが、知覚過敏専用の歯みがき粉の利用や、清潔を心掛けることにより、じきにおさまります。

油断禁物!「再発」のメカニズム

「一度治療したから安心」とセルフケア(プラークコントロール)を怠ると、歯周病は即座に牙を剥きます。

たとえば中程度の歯周病で、歯石を取ってもらうと非常にスッキリします。しかし一時的に歯周ポケットが深く、往々にしてダメージを受けているので、菌が侵入しやすい「弱点」になっています。ここから他人任せで自助努力のケアやプラークコントロールをサボると、菌は最短距離でポケットの最深部へと到達し、すぐ骨をこわし始めます。

ポケット 再発 末期P

最深部からのスタートになりますので、中程度から重度への移行スピードはほぼ変わらなず、歯石を取ってもらった意味がほぼない、ということになってしまいます。

プラークコントロールが必要な理由はたくさんありますが、このようなことを防ぐためというのも、とても大切な理由の一つです。

正しい治療のステップ

急がば回れ 歯周病治療

歯周病治療は、魔法のような一回限りの処置ではありません。以下のステップを一段ずつ登っていく必要があります。

よくある例ですが、「とりあえず目先の歯石だけ取ってほしい」という声もしばしばいただきます。しかし先ほどまでに書いた理由により、まずは土台となるブラッシングができていなければ、治療をしてもすぐに再発してしまいます。

検査

  (自分で何もしない)
   ↓

ブラッシング指導

  (まずは自分で菌を減らす)
   ↓

見える縁上歯石除去

   ↓
  再評価(病状をチェック)→
   ↓

見えない縁下歯石除去

   ↓
  再評価(病状をチェック)→
   ↓

外科的処置・再生療法

  (重症の場は手術で対応)
   ↓
  再評価(病状をチェック)→
   ↓

メンテナンス

  (歯周組織の維持安定)
  (場合により歯周補綴、インプラント)

このように、より簡単なもの、自分でできるものから、より複雑なもの、専門的なものへと段階的に移行していくステップを踏みます。

そして区切りがついた段階で一般には重症化予防や維持安定のためにメンテナンスに移行していきます。

最後に

お口は、食事を楽しみ、会話を彩る、人生の大切な入り口です。 歯周病は沈黙の病気ですが、早期に発見し、プロのケアと毎日の歯ブラシを組み合わせれば、確実に進行を食い止めることができます。

「最近、歯ぐきから血が出る」「なんとなく違和感がある」 そんな小さなサインを見逃さず、ぜひ私たちと一緒に、あなたの大切な歯を守っていきましょう。

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